個性を強みにー就労支援の可能性ー
KEIPEで体現する“誰もが挑戦できる場所”

「障がいを特別なものにせず、誰もがそこにいていい社会にする」をVisionに掲げるKEIPEでは、障がいを持つ仲間が個性を強みにして、それぞれが多方面で活躍しています。

メンバーの1人としてKEIPEで活躍する鈴木ゆらさんに、障害者就労継続支援A型事業所での様子やKEIPEとの出会い、働くことへの思いを。サポーターの佐野梨沙さんに、KEIPEの就労支援やゆらさんへの思いをお伺いしました!

「障害者就労継続支援A型事業所ってどんな感じなの?」「どんな風に個性を強みに変えていったの?」など、KEIPEの就労継続支援が気になる方、個性を強みとして1歩踏み出したい方、ぜひ読んでみてください!

もくじ

※用語解説

一緒に悩んで、泣き、笑ってくれた支援学校での経験

―2025年3月に支援学校を卒業したばかりのゆらさん。どんな学生生活を送っていましたか?

ゆら

私は聴覚の障がいを持っているので「ろう学校」に中学1年生から高校3年生までの6年間通っていました。中学校のときから生徒会の活動をしていて、高校3年生のときには生徒会長をやっていました。生徒会長に誘われたときは、就職に向けて集中したかったから最初は断ったんです。でも他に立候補する人もいなくて……。

それに先輩がいろんなことをやっていたのを見ていたので、それで「やってみよう!」と思いました。

ー生徒会活動は楽しかった?

ゆら

「今までやったことのないことをやろう!」と決めて生徒会活動をしていました。

ろう学校って、幼稚部から高等部まであるんです。でもすべての部が集まるイベントはなくて。みんなと関わって楽しい学校にしたいなって思って、幼稚部から高等部を一斉に集めてレクをしたんです。

ー楽しそう!

ゆら

それまでは毎年決まった行事しかやっていなくて。ずっと同じ学校行事しててもつまらないなって思って(笑)

ー行動力がありますね!!支援学校で印象に残っている先生はいますか?

ゆら

高校2年生から2年間お世話になった先生ですね。その先生は私と一緒で聴覚に障がいを持っていたんです。悩んだり困ったりしたらすぐ助けてくれる先生でした。

例えば就職についても、私は「まだ考えるのは早いかな」と思っていたんですが、その先生は、私が考える前に資料をたくさん集めて見せてくれました。私がやりたいことを見つけられるようにって。

悩んでいたときに、私が先生に「学校行きたくない」って言うと、私を支えてあげられていない悔しさで、先生も一緒に泣いてくれました。一緒に泣いたり笑ったり……すごく濃く思い出に残っています。

梨沙

先生、この間お店に来てくれたよね?

ゆら

そうなんです。でもお店が忙しくてその時は話せなかったから、何日か後に学校に会いに行きました。「本当に社会人になったんだね」って、うれしそうに言ってくれました。

梨沙

ゆらさんの心強い味方だね!

過剰でなはい、”できないこと”を”一緒にやる”KEIPEでの実習

―KEIPEはどのタイミングで見つけたんですか?

ゆら

最初は一般の企業に就職しようと思って、県外に聴覚障がいがあっても働ける企業を見つけて、応募しました。いろいろな検査があったんですが、私はその検査が通らなくて。そのときは落ち込んで「就職は私にはできないんだ」って、自己嫌悪に陥りました。

そんなときに実習でKEIPEに来ました。KEIPEでは、パソコンを使った業務やふるさと納税用のフルーツ出荷をやってみました。いくつかの仕事にチャレンジすることで、自分のペースとか得意なものを見つけられた気がしました。

2回目の実習のとき、KEIPEのスタッフに「一緒に働こうよ!待ってるね!」って言ってもらえたのを覚えています。

―どうしてKEIPEで働くことに?

ゆら

正直、最初はA型で働くことはあんまりポジティブには捉えてなかったんですよね。私にはできることがあるのに……って。私、負けず嫌いなんです。笑

でもKEIPEで「働く」ことを経験できるんだったらやってみよう、がんばってみようと思いました。KEIPEで働きながらやりたいことを見つけるのも良いかもって。

ー梨沙さんはそんなゆらさんをどんな風に見ていたんですか?

梨沙

KEIPEで働くことを選ぶまでに、いろいろと迷っていたことを知っていました。その中でも、ゆらさんはできることがたくさんあるんだって思っていました。

私自身も、初めから「自分はできない」と思い込んでしまうことがあります。でも実は少しのサポートがあればできることってたくさんあるんですよね。みんな可能性の種をたくさん持っている。ゆらさんもたくさん持っている。その可能性の種に芽が出るように、できることを見つけて、一緒にチャレンジしたいと思いました。

ゆら

KEIPEではみんな優しくサポートしてくれるけど、つきっきりですべてをお世話してくれるわけではないんです。できることは一人でやらせてくれる。できないことだけをサポートしてくれます。

梨沙

ゆらさんはKEIPEで働くことを自分で決めて来てくれたんですよね。それがすごいと思いました。一時は自信をなくしていたのに、KEIPEで「できる」と納得できたところがすごいなって。

あきらめたくない―KEIPEでのチャレンジー

ーKEIPEはどんなことに挑戦していますか?

ゆら

nouto工場直売所で接客の仕事をしています。最初は製造の仕事をしていたんですが、KEIPEのスタッフに「接客やってみない?」と誘われたんです。一度は断ったんですが、でもあきらめるのが悔しくて。そこでも負けず嫌いの気持ちが出てきて(笑)

それでやってみることにしました。最初は怖かったけど、今は挑戦してよかったと思っています。

―そこでやってみようって思えた、その原動力はどこから来ているんでしょうね?

ゆら

少し前までは、自分の障がいに葛藤していたんです。私の場合、まったく聞こえないわけではないので、聞こえない世界と聞こえる世界、どっちの世界で生きていくんだろうって悩んでいました。

そのときに学校の先生が、自分の経験を語ってくれました。「自分の人生を生きて良いんだよ」と言ってくれたんです。そのときから、できることをやっていこう。自分で選んで生きていこうって思ったんです。

接客中のゆらさんは「手話OK!」のプレートを胸に

ー自分で選択して、自分の人生を生きていく…
ゆらさんはその意思をしっかりと持ってますよね。
今年の入社式で、ゆらさんが全社員の前で「私は聴覚に障がいがあります。だから話していることを聞き取れないこともあるけど、マスクを取って、わかりやすく話してくれたら理解できるんです」って、みんなにリクエストした時間があって。それがすごく印象的でした。

ゆら

私の特長をはっきりと伝えたほうが、みんなにもわかってもらえるかなって。

ー私はゆらさんから伝えられてすごくうれしかったです!

今年の入社式で、全社員に自分の個性についてお話しました

チャレンジしたからこそできる成長

ーKEIPEで働いてから、自分の変化はありましたか?

ゆら

少し前までは自分に厳しくなってしまって、できないこと、うまくいかないことがあると自分を責めてしまっていました。今は、できなかったら「次にどうしたらいいかな」「どうすれば解決できるかな」と考えるようになりました

この間も、お客様に話しかけられて、その方がマスクをされていたので、「私は耳が聞こえないので、マスクを取ってもう一度話してくれますか?」と言ったんです。そのお客様は「ごめんなさい」と言って、私に話すことをあきらめてしまいました。

これまでだったら、聞き取れなかった自分を責めたかもしれません。でもそのときは、耳が聞こえる他のスタッフを呼んで、そのお客様に声をかけてもらいました。お客様もそれで聞きたいことが聞けたみたいで、ほっとしました。

梨沙

ゆらさんは、お客様のことを考えて行動できているなってつくづく思います。主語が「自分」じゃなくて「お客様」になっているんですよね。

ーりささんから見たゆらさんはどんな風に変化していますか?

梨沙

実習中は、私たちから話しかけることが多かったなって思います。今のゆらさんは、自分から人に話しかけたり、自分のことばで語れたりする場面が多くなったなって思います。

ーゆらさんは、KEIPEにとってどんな存在でしょうか?

梨沙

「可能性に蓋をしない」を体現していますね。ろう学校に通う生徒たちや同じような障がいを持つ人たちにとって、ゆらさんの働く姿は、希望になるんじゃないかなって思います。

ーゆらさんの今後の展望を聞かせてください。

ゆら

今回の接客の挑戦のように、少しでもやってみたいと感じたことにチャレンジして、できることを積み重ねて、一般就職につなげたいです。聞こえなくても、話せなくても、筆談ができるし、スマホで音声表現もできます。

聞こえる人にサポートをしてもらいながら、できることを少しずつやっていっていけば、自分の可能性は広がるんですよね。自分の可能性を消したくないなって思います。

梨沙

今支援学校に通ってる皆にも実習に来てほしいよね。

ゆら

ぜひ来てほしいです!

ゆらさんのお仕事のタイムスケジュールを教えてもらいました。
ゆらさんの場合は、半日勤務と1日勤務のいずれかで働いています。

KEIPEで働くことにチャレンジしたい方は参考にしてみてください!
KEIPEでは、甲府市、笛吹市に就労継続支援A型サービスのオフィスを構え、約100名の障がいのある仲間とともに、自己実現と事業運営を行っています。

企業で働くことが難しい障がいのある人と雇用契約を結んで、日々の仕事を通じて知識やスキルを高めていき、本人のキャリアプランに沿って福祉的就労を卒業して、他企業又はKEIPEへの就職を目指します。

「自分にはハードルが高そう」「ついていけないかも」と不安に思う方、働くイメージを持てない方もいるかもしれません。

そんな方が安心して働く道を選べるように、就労継続支援A型事業所の見学会を開催しています。

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