企画で規格を超えていく! 若手二人が仕掛けるEC成長戦略と地域商社の未来

私たちKEIPEは、福祉のルーツを持ちながら、山梨の豊かな農産物の価値を全国に届ける「地域商社」の拠点を笛吹に持ち、挑戦を続けています。

私たちの事業の根幹にあるのは、“企画で規格を超えていく”というキーワード。市場に出にくい規格外のフルーツから最高品質の「秀品」まで、その潜在能力を最大限に引き出し、独自のECサイトやふるさと納税を通して販売しています。

今回は、地域商社事業部の挑戦を牽引してきた二人の若手キーパーソンにインタビュー。EC事業の立ち上げと成長の土台を築いた岡田広夢(以下、岡田)と、その勢いを全国へ飛躍させようとバトンを引き継いだ上野武志(以下、上野)。

「これまで」と「これから」を担う二人のリアルな声から、EC事業立ち上げ時の苦悩と成功の裏側、そして私たちが目指す地域の未来について、熱く語ってもらいました。

事業のルーツと「規格外」フルーツに込めた想い

―まずはKEIPEの地域商社事業について、改めてご紹介いただけますか?

岡田

KEIPEの地域商社事業は、山梨の農産業が抱える課題、とくに「フルーツのロス」を解決するために立ち上がりました。事業のルーツは、創業メンバーの実家が桃農家だったことにあるんです。農家さんの「人手不足」や味は変わらないのに形やサイズで市場に出せない「規格外」のフルーツの存在を、自分事として見てきたことが出発点です。

―つまり、単に農産物を売るだけでなく「農家さんの困りごと」を解決するための事業なんですね。

上野

その通りです。そして、私たちが大切にしているキーワードが「企画で規格を超えていく」です。フルーツって、品種改良や栽培方法で、とてつもないポテンシャルを秘めている。とくに山梨は桃やぶどうの名産地として日本一の品質を誇るものも多い。その品質を、少しの見た目の難で「訳あり」として安価に扱われてしまうのは、あまりにもったいないと思っていて。

岡田

規格外品を単に安く売るのではなく、例えば「加工品(ジェラートやドライフルーツ)にする」という企画や、「訳ありだけど家庭で食べるには十分すぎる品質」として、適切な価値を付けて届ける。これが私たちの挑戦です。

―上野さんは大阪出身で、山梨に来て初めてこの状況に直面されたそうですね!地域商社事業の構想を聞いたとき、率直にどう感じましたか?

上野

僕は、 2022年に新卒で入社しました。地域商社事業は立ち上げ前でしたが、こんな事業をしていくという話を聞いたときは、純粋に「僕らで挑戦するべきだな」と思ったんです。農家さんのロスを減らし、消費者に届けるのはシンプルに真っ当なことだと。その「あるべき姿」を事業として形にしていくことに、大きな可能性を感じましたね。

―ところで、この事業にはもう一つ大切な側面があると伺いました。

岡田

実はECサイトの画像デザインや販売ページ制作を担当してくれているのは、元々KEIPEの就労継続支援A型事業所のメンバーだった方なんですよ。今は正社員として地域商社事業部に参画して、事業の成長を支えてくれる本当に大切な存在になっています。

上野

彼女はまさに「ポテンシャルを活かす」という理念の体現者ですね。同時に、地域商社事業を共に作り上げてくれる仲間でもある。福祉と商社が支え合う、理想の形だと思っています。

EC事業の立ち上げと若き奮闘

―岡田さんは2024年4月に異動され、EC事業の立ち上げに深く関わられました。もともとECは構想にあったものの、岡田さんが後押ししたことで本格始動したと伺っています。

岡田

はい。元々、ふるさと納税事業が基幹としてありましたが、法改正や外部要因で売上が大きく左右されるリスクがありました。マーケットに天井も見えていたため、自分たちでコントロールできる領域としてECは必須だと強く感じていました。僕自身、マーケティングや事業を伸ばすことに興味があったので、「今がチャンスだ」と。

―EC立ち上げ当初、最も苦労されたのはどんな点でしたか。

岡田

ふるさと納税の成功体験に良くも悪くも影響されましたね。(笑)
最初、ECでもふるさと納税と同じやり方で販売していたんですが、全然売れないんです。画像も価格設定も、訴求の仕方も、ECでは通用しないってことがわかってきて。ふるさと納税と違ってECは中間業者がいないので……自分たちで全てやらなければならない。片手間では絶対に伸びない、と危機を感じましたね。

―その危機感を打ち破った「企画」が、桃の「玉数(たまかず)販売」だったそうですね。

岡田

はい、それが最大のターニングポイントでした。これまでのEC販売は、仕入れの都合上「2キロ」「5キロ」という重さで売るのが一般的でした。でもこれだと純粋な価格競争になってしまうんです。

―なるほど。どうやって「玉数」に行き着いたんですか?

岡田

ふと「スーパーでは桃を2個、3個と『玉数』で売っているのに、なぜECではキロなんだろう?」と思ったんです。2キロと言われても、一般家庭のお客様はどれくらいの量なのかが直感的にわからないんですよね。

キロ数だとお客様が他の商品と価格比較しやすくなりますが、「玉数」なら重さが違うので比較が難しい。価格競争から脱却しつつ、お客様にとっても「必要な個数」が分かりやすくなる。お客様のためにもわかりやすく販売したいと思ったんです。

―その素朴な疑問が、ECでの戦い方を変えるヒントになったんですね。

岡田

はい。「玉数」に変えた途端、数週間で売上が一気に伸びました。「これがマーケターの仕事だ」と手応えを感じましたね。単純な価格競争に陥らず、価値を伝えることで売上を伸ばせたのは、事業を始めた意味があったなと。

―その成功が弾みとなり、今年8月にはEC事業部として楽天ショップで「月間MVP」も受賞されたそうですね。

岡田

楽天ショップ・オブ・ザ・マンスの2025年8月度で、ベストショップジャンル賞の肉・野菜・フルーツ部門を受賞しました。立ち上げたばかりの頃は、まさか受賞できるなんて想像もしていませんでした。ただ、あのとき「玉数販売」に踏み切れたのは「このままじゃダメだ、絶対に伸ばしてやる」という強い想いがあったから。あの違和感を信じてよかったと思っています。

EC拡大に伴う新たな苦悩と仕組み化への挑戦

―売上が伸びて実績が残せると、今度は「次の課題」が見えてくるものだと思います。EC事業が成長したことで、新たに直面した「1から10への苦悩」はどんなことでしたか?

岡田

課題は「品質管理」と「調達の安定性」に移りました。売上が伸び注文数が増えれば、今度は品質の管理が重要になります。とくにデリケートなフルーツを扱うので、配送品質の維持が大切で、お客様に満足のいく商品を届けたいと思いました。

配送ひとつとっても、どのルートでどの資材で送るかなど、すべてが品質に直結します。夏は繁忙期でとにかく「目の前の注文をさばく」のに必死で。品質管理や生産性の向上といった「仕組みの整理」にまで手が回らない状況でした。

―また、桃の収穫量が予想を下回ったことで、販売を一時停止せざるを得なかったこともあったそうですね。

岡田

すごく悔しかったですね。売れる時期に販売停止したことで目標達成には届きませんでしたが、この経験から「安定した調達の仕組み」が最重要課題だと痛感しました。法人農家さんだけでなく、小規模な個人農家さんとの直接契約を増やす方向に舵を切りました。

―なぜ個人農家さんとの直接契約を増やしたいのですか?

上野

安定供給やボリュームの面では農業法人の強みがありますが、ロスになる規格外農産物、とくに超訳あり品は法人経由だと実は手に入りにくいんですよね。

岡田

個人農家さんと直接契約することで、そういった規格外品も仕入れることができます。ECで送れない分は、2025年5月にオープンした自社の加工販売所「nouto工場直売所」(ジェラート・ドライフルーツ製造販売所)で加工することで、農家さんのロスをゼロにするというサイクルが生まれます。

―なるほど!事業が点ではなく、線で繋がっていくんですね。

岡田

そうなんです。この仕組みを安定させるため、僕は11月からEC販売責任者から製造・出荷マネージャーに役割を変えました。来年に向けて、品質を保ちながら大量に出荷できる「再現性のある仕組み」の構築に力を入れています。

役割交代のバトン、そして描く未来

―EC販売の責任者は、上野さんにバトンタッチされました。この交代について特別な感情はありましたか?

上野

正直なところ、あまり「引き継いだ」という感覚はなかったんです。半年間、岡田さんと一緒にチームで走っていたので。ただ、役割や責任が変わることで、組織が何を自分に期待しているかは深く考えました。

岡田

僕も心配はしていません。今まで一緒にやってきた中で、お互いの得意分野を理解し合えている。僕は仕組み化や整理が得意で、上野さんは「何もないところから形にして、人を繋ぐこと」が得意です。土台を築けたと思うので、次は上野さんにその仕組みを広げ、事業を飛躍させてほしいと期待しています。

―役割は変われど、お二人の仕事への姿勢は一貫していますね。

上野

僕にとって、仕事の取り組み方は役割や肩書きで変わるものではないです。常に「目的ベース」で物事を考えたいと思っているんです。僕らの成果って、取引先の農家さんやECの購入者など「外側」にあると思っていて。農家さんなら、可能性に溢れたフルーツの価値を変えて届けること。福祉の事業なら、ポテンシャルを活かせていない人に活躍できる環境を作ること。これらは役割や肩書で左右されないですからね。

――「可能性が価値に変わる瞬間」を生み出すために仕事をしている、と。

上野

まさにそうです。だからEC販売の責任者となった今は、山梨県内の農家さんだけでなく静岡のミカン農家さんなど、山梨県外にも積極的に営業をかけています。山梨の会社としてのプライドは持っていますが、ここにとどまる必要はないと思っています。私たちが目指すのは「障がいを特別なものにしない」というビジョンであり、それは日本全国、そして世界へと広げるべきだなと感じているんです。

―地域商社事業の活動を通じて、KEIPEが実現したい未来の姿を教えてください。

岡田

僕はEC販売で培ったノウハウを、フルーツに限らず新しい商品でも応用できる「再現性のある基幹事業」にしてほしい。そして売上という形で会社を支え、KEIPE全体の成長に貢献していってほしいと思っています。

上野

私はお客様に「KEIPEが好きだ」と思ってもらえるファンを増やしたいです。私たちが地域や農家さんの課題解決に挑む姿、そしてそこで働く人たちの想いを通じて、喜んでもらえる仕事を続けていきたい。

そのために「社内の垣根」をなくし、全員が一つになって成果を作り上げる組織にします。そして、この仕組みを山梨に留めず、全国の就労支援事業所とマッチングし、雇用と物流のモデルを全国へ展開できたらと思っています。

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KEIPEの「企画で規格を超えていく」取り組みは、ふるさと納税でも展開されています。

若き挑戦者たちが情熱を注ぎ、農家さんと共に選び抜いた山梨のフルーツを、ご家庭で味わってみませんか。