「就労継続支援A型」 と 「就労移行支援」
ーじゃあまずは、前提の知識として確認。
KEIPEが1番長く取り組んでいる事業、
就労継続支援A型事業所 ※1(以下A型)ってどんな場所ですか?
未来
そうですね。まず障がいを持っていて、就労が可能な状態の方が働く場所なんですけど、その働く目的は必ずしも企業への就職だけがゴールじゃなくて、A型で安定して長く働きたいっていう方たちもいます。でもKEIPEの場合は、次のステップとして就職を目指している方が多いですね。
具体的には、雇用契約を結んで、KEIPEから給与を支払います。取り組む業務は様々なんですけど、仕事を通じて、苦手というか、ご自身が思ってる課題感みたいなところを、クリアしていくっていうようなイメージですかね。
モロ
俺はよく、A型は「働く場」と「働く機会」を提供するサービスって説明するかな。A型が設置された意義としては、企業で働いていたけど、障がいが理由で上手くいかなかった、続けられなかったって方の受け皿なんだよね。
ーなるほど〜。それを踏まえて、就労移行支援 ※2(以下移行)はA型の次のステップってイメージなんですが、あってますか?
モロ
そうだね〜次のステップって側面もあるけど、役割がちょっと違うかな。難しいのはA型って雇用型だから、仕事をしてもらわなきゃいけない。でも、それプラスアルファで、終業後に就職に向けて勉強しましょうって、本気度が高くなきゃ、なかなか動けないかなっていうのは思ってて。
未来
そうですね〜。
はじめは、お給料出ない中で、あえて移行を選択するのってどういう人だろうっていうのは正直思ってました。でも、今は何か、本気で就職を目指す準備の場だなって思います。
モロ
本当にそう。自分の課題だけに集中できる時間を丸1日取れるのはめちゃくちゃ強みだな〜。
未来
ですね。A型でいざ企業への就職を目指すとなった時に、ちょっと目的とぶれるというか…。担当している仕事の進捗とか、納期とか、給与が発生してる中でこの時間をとるべきか?とか、いろんな外的要因があって、どうしても本人の目指す就職のための学びという観点は、だんだん薄くなりますね。
移行支援のサービス流れ
モロ
えっと、まずは問い合わせをもらって、じゃあ一度ぜひ見学に来てくださいってなります。次のステップでは1週間体験をしてもらってる。そこもね、雰囲気とか合う合わないがあったりするので。
それを経て、利用したいですって意思決定してくれれば、2年間サービスとして使えます。入ってからは、時間をかけて面談して、「何をして働きたいのか」「どんな企業で働きたいのか」「どの業界に興味があるのか」というのを、もう最初に決めちゃう。
未来
へえ〜そこまで!
モロ
もちろん、途中で変わってもいいんだけどね。見学とか実習行ったりして、やっぱ違ったなって思ったら、その時に変えればいいしね。でも、まず目的が決まれば、途中でダレたりブレたりしないし、こちらが目的に立ち返るような関わり方を常にできるから。
ー 例えば、全然業界や職種が決まってないって人もいる…?
モロ
うん、いるいる。その場合は、まずは世の中でどんな仕事があるかとか、自分の興味関心ってどこにあるのっていうことから始める。好きなもの何かしらあるでしょ? すみっこぐらしが好きとか、BTSのジョングクが好きとか。(注:未来さんの趣味です。)
未来
ふふふ。よく覚えてますね笑
モロ
それで例えば、漫画が好きですってなったら、漫画に関わる仕事って何があるのかってめっちゃ調べてもらうの。そうやって、より現実的に仕事にしたらどうなるかなって考えてみた中で、興味ある職種をみつけてく。実際に身近な企業があれば見学に行ってみたりとかもする。
ー え〜、いい!もうこれ、みんなやりたいですよね笑
モロ
そうだよね。みんなやったらいいと思う笑
思うけど、、天職なんかないじゃん。やってみなきゃ分からないし、やった先で自分で楽しいとか楽しくないって感じるわけで。
ーそうだね。結果として天職だと思うにしても、1発で当てられないしね。
モロ
そうそうそう。だから、とりあえずは目標を決めて動き出してみる。そこで、自分のイメージと、実際の仕事の雰囲気を擦り合わせて、それでもブレないんだったら、必要なことを身につけていくって流れです。
目指す就職に必要なのは、身だしなみとか、出勤率かもしれないし、人それぞれ。あとは、コミュニケーション課題の場合は、SST ※3 で練習してみるかって感じ。
イメージとしてライザップに近いと思っていて。腹筋6個に割りたいんですってなったら、全部パーソナルで決めてくれて、やれば成果がついてくる。
それと一緒で、例えば銀行の事務として勤めたいんだったら、これとこの実務スキルが必要だよねって分かる。で、現状パソコン使えないんですってなったら、じゃあEXCELの表計算を特訓しよう、とか。
あとは実際に見学や実習に行ってみて、自分に必要なものを知って、そこから身につけて、またチャレンジして、じゃ採用!となれば一番近道というか。
ー 実習で課題が見つかった場合は、フィードバックもらってKEIPEキャリアに持ち帰って訓練したりするの?
モロ
そうだね、あるね。あとは、同じ業界でも違う会社もあるから、雰囲気が合わないんだったら違う企業に行ってみる?ってこともする。
ー私も学生の時やりたかったです・・笑
モロ
でしょ?だからやっぱ地域の必要な人にもっと知ってもらいたいし、使ってもらいたいし。KEIPEキャリアでは「パーソナルプログラム」って名前で強みとして出してるの。ネーミングセンスがもしかしたら良くないのかもしれないけど…笑
一同笑
地域企業とのかかわり
ーちなみに、それって企業側の受け入れ体制も必要だと思うんだけど、そんな企業ってたくさんあるんですか?
モロ
うん。そうだね。基本的にはどの企業にも法定雇用率 ※4 っていうのがあって、そこを満たしたいけど、取り組めていないって企業は多いなと思ってる。あとは、障がい者雇用をやっている企業っていう枠組みで数えなくてもいいんじゃないかなと。
※山梨県では、法定雇用率を守る義務のある企業数が660社。そのうち達成している企業は401社で60.8%に留まっています。(令和5年度 山梨労働局資料より)
モロ
これから少子高齢化が進んでいって、数年で深刻に人材不足になっていくというのが分かっている中で、「障がい者雇用」と、シルバー人材や外国人とかの「障がい者じゃない人の雇用」って改めて区分けをする必要はないよねって感じる。
ひとりの人材として見て、その中でたまたまその人の持っている個性が障がいですよね、みたいなところを企業さんにはお話してて。
そういう大きな括りにしていくと、感覚値としては今もう既に取り組んでいる企業さんもたくさんいて、そこから障がい者の雇用も増えていったらいいなーと。
ー なるほど。でも気持ちはあっても、その為に仕組みを作ったりするコストが出せない、一歩踏み出せない企業が多いっていうのもわかる気もします。
モロ
だよね。だから、企業のやれたらいいなという想いに対して、障がいを持った方々をちゃんと活躍できる人材として送り出す取り組みは、すごく必要だと思ってます。
就職したから、はいさよなら、でない
モロ
で、サービスの流れの話に戻るけど、じゃ就職できたから頑張ってね。さよならっていうサービスじゃなく、その先もあって。就職後に、定着フォローっていう形で6ヶ月間、月に1回就職先の企業さんと、本人の3者で話をして、課題やできたこと、次の1ヶ月の目標は何にしようかっていうのをやります。
ーお〜。そこでも企業側からフィードバックがあるの?
モロ
いや、ここの目的は定着だからね。最初は3者で話してるんだけど、最終的には、企業と本人とで、きちんとコミュニケーションを取れる関係性を作ることが、目標だと思ってる。
最初の1、2ヶ月はがっつり関わるんだけど、だんだんちょっとその比重を小さくして、6ヶ月後にはもう仲良しですねってなるといい。
未来
会社となんでも相談できるって状態ですね。
モロ
そうそう、何か色々気軽に相談できたりとかしたらさ、働くの気楽じゃん。で、6ヶ月経った頃に、今後もこういう福祉的な支援は必要ですかって聞く。で、大丈夫そうですってなれば、もう福祉からは卒業ですね!ってなる。
未来
はやい。
モロ
もちろん引き続きフォローして欲しい場合もあって、KEIPEとしては就職後最大3年間は、定着支援としてずっと関わり続けられる。あと、企業の中に入って一緒に定着支援に取り組んでいけるジョブコーチって資格も、俺と宮原さん(注:KEIPEキャリアのスタッフ)が持ってるし。
ーじゃあ、最長で利用したとして…えーっと…
モロ
2年移行支援に通って、就職して6ヶ月経つと移行支援の福祉サービスとしては期限が切れるんだけど、そこからまた定着支援やジョブコーチを3年間使えるから…最大で5年半ぐらい関わる。笑
ーおお、長いーッ! 人生並走するパートナーって感じだね。すごく移行支援の勉強になりました。
専門用語集
※1)就労継続支援A型事業所
障がいや難病を持っている方が、一定のサポートを受けながら雇用契約に基づき働くことができる福祉サービス。関連して、B型事業所は雇用契約を結ばずに生産活動などの就労訓練を行うことができる福祉サービス。
※2)移行支援事業所
障がいや難病を持っている方が、一般企業への就職を目指すために必要なスキルを身につけることが目的の福祉サービス。
※3)SST
ソーシャルスキルトレーニングの略。認知行動療法に基づいたリハビリテーション技法。日常生活の身近なテーマを設定し、ロールプレイ形式で学ぶ訓練などを行う。
※4)法定雇用率
障害者雇用促進法に基づき、事業主が常時雇用している労働者のうち一定割合は障がい者を雇用しなければならないことが義務付けられており、その比率のことを指す。
※5) ジョブコーチ
職場適応援助者。配置型・訪問型・企業訪問型がある。障がいのある方が働く職場において、障がい特性を踏まえた専門的な支援を行い、職場適応をサポートするスキルを持つ人。