人種やハンディキャップを超えて、多様な人が働くアメリカの「キャリア支援」とは? ワシントンD.C.視察対談!(後編)

2024年2月27日〜3月15日までの約3週間、KEIPEの選抜メンバーで、アメリカ視察に行ってまいりました!この記事はKEIPEのスタートした事業でもある「障がい者のキャリア」に関して学んできた経験をシェアする対談の後編です。(▶︎前編はこちら

お話しするのは、アメリカの大学でダイバーシティを学んだのち、KEIPEに新卒で入社し、現在3年目の荻野響希(以下:響希)と、代表の赤池侑馬(以下:侑馬)。視察から得たヒントを、実務や経営に活かすアイデアを2人が語る後編。どうぞお楽しみください!

企業も求職者もハッピーなマッチングを

侑馬

なんか日本だと「総合職」みたいな漠然とした採用募集もあるじゃないですか。でも、アメリカだと一つ一つ専門領域があるっていうか。逆に他のことできなくてもそれができてればいいみたいな雰囲気はあって。企業側もこういうスキルを持っている人材が欲しいというのが結構明確になっている状態で募集する。要は、言語が完璧じゃなくてもこのスキルができればいいとか、そういう条件がはっきりしていて。だから、スキルアップもすごく専門的にできる。

でも今、日本の障がい者雇用の現状はどうかというと、「前向きな人が欲しい」とか、「元気に毎日来てくれる人」とかいう条件で募集したりする。

多分、会社で育んでいくっていう文化もあって、それはすごく日本のいいところだと思うんだけれども、逆にそれでマッチングの精度が下がってるような気がしていて。

響希

そうですね〜

侑馬

企業も欲しい人材が不明確。送り出す方も不明確。本人が、自分が何のスキルを持っているかも不明確だから、そのミスマッチが多い。だから、育てていくという文化を残しつつ、ちゃんとスキルマッチもしていけるような仕組みが、各地域にないといけないと思って。
COLERE(※3)はそれを導入しようと思っているんだよね。まずはサービス業、飲食業という分野で、必要なスキルを全部明確にして、今自分はどこにいるかっていうのを見えるようにしたい。で、それを各事業部も年内に展開できるようにしていく。

ー おお〜。なるほど。

侑馬

そうすれば、飲食店に就職したいという方を紹介する時に、こういうスキルを持った人です!と最低限、紹介側は提示できる。そしたら企業側からすると、あ、ここはいらないな、とかここまでできるなら採用したいっていうのが分かる。企業は多分、必要な要素は分かってはいるけど、言語化や整理ができてないから。


その棚卸しを手伝う方も、今KEIPEキャリアでの企業支援チームというのを作ったので、やっていきたいんだよね。それを導入していけば、お互いにハッピーなスキルマッチにつながる。

日本文化の「人を育んでいく姿勢」といういいところを残しつつ実現できたら、アメリカのやり方も取り入れた、より強力なものが、多分つくれるんじゃないかなと思って構想してます。

ー 話を聞いていて、キャリアカウンセラーみたいなポジションの専門性の高さが、すごく肝なのかなって思いました。

侑馬

そうだね、要はさっき響希が言ったみたいに、KEIPEでもいろんな障がいがあるのに、ごちゃってやってるっていう状況だと思うので、どんどん今KEIPEにいるUCD(ユニバーサルキャリアデザイナー※4)みたいな人材の育成・スキルアップをしていかなくちゃいけない。

あとは障がいの「個人モデル」と「社会モデル」(※5)っていう考え方があるんだけど、さっき言ってたその個別の専門的な支援というのは、どちらかというと個人モデルの取り組み。ここも徹底的にやっていくんだけれども、社会モデルといって、環境側を変えることで、障がいが障がいではなくなるようなアプローチがあって。ここを僕らがやっていかなきゃ、変わんないなと思ってます。
アメリカを視察して、キャリアの分野でKEIPEが何をしたいかがめちゃくちゃ明確になりました。

意思と可能性を大事にするサポート

ー 響希くんは、普段の業務で何か変化したこととかってあるんですか?

響希

何かアメリカに再度行くっていうチャンスをいただけたことで、何だろう、障がいを特別にしない、というか、何か色んな人がそこにいて当たり前みたいなことが、より自分に浸透した感じがします。

侑馬

うん。

響希

1番は、今まで自分がサポートし過ぎてたなっていうのを改めて感じました。
もっとみんなを頼っていこうっていう。みんなの方が得意なこともいっぱいありますし、自分がそれをやっちゃうことで、みんなの強みをつぶしちゃっているなって。アメリカでのキャリアセンターの人は、皆さんの可能性を引き出すというか、自分でやってこい!って感じが強かったので。

侑馬

そうそう。なんかさ、言われなかったらサポートしちゃいけないっていうのもまたアメリカっぽいよね。法律的に決まってる。個人が自己主張しなかったら終わりだもんね。

響希

はい、そこがすごい。ついこの間も、チームメンバー同士で問題があって、解決してもらいたいって自分に声がかかったんです。前だったら多分深く入っていってたと思うんですよ。でも、それ当人同士でサポートしあっていけないかな?みたいな返事をして。実際に解決できたんです。それは自分の中で大きな進化でした。

侑馬

おお〜。なんか、結局過保護に手を出しすぎることが人をダメにするっていうか、何て言うのかな。別の言い方すれば、相手を大人として信頼しないことで、可能性を引き出すチャンスをなくしてるから、失敗する権利もちゃんと大事にしているのがアメリカという国だなと思いました。

そして失敗してもまた立ち直りやすい。チャレンジャーに優しいし、ルーザーにも優しい、敗者復活戦がある国だなと。その代わりやっぱり自己責任という考えは強くて、自分で言わなかったら何も得られない。

響希

そうですね。

侑馬

どこまで手を差し伸べるのかというのはすごく難しい問題だけど、その人の人権というものを本当に大事に、意思を大事にするっていうのを持てるといいなって。
行動は意思だもんね。
いやーこの成長を響希から聞けたのはすごく良かったなって今思いました。なんか響希はすぐ気が付いちゃうからさ。

ー わかります。相手の気持ちが読めちゃうタイプ。

侑馬

そうそう、だからすごい手厚くサポートできるんだけど、そこから可能性の余白を見出して、サポートを加減するっていうのは、これは何かすごい大きな人間的な成長というか、スキルの成長だと思う。

見守り、育む目線

ー アメリカのような、自己主張が当たり前の文化で育ってきた人達に対しての方法と、やっぱり主張する前にケアされて育ってる文化の日本で、取り組むにあたっての塩梅はどう思いますか? アメリカスタイルになればいいってわけじゃないと思うんです。

響希

難しいですね〜。どうしても対ひとなので、そこを定量化したりとか、そういうの難しいですね。何だろう・・。

本人たちが壁を目の前にしてる状況で、なんだろうな。多分、自分とその相手に信頼関係があって、お互いのことをわかっている状況じゃなきゃできないことなんですけど、その人にその課題が乗り越えられそうかなって考えてみて、1ミリでも可能性があれば行ってこい!って最近はしてます。これは寄り添った方がいいなって思えば一緒に登るみたいにしていて・・・・・それが・・なんかもう全然説明できない!!!笑笑

ー できてるよ!大丈夫!笑

響希

笑 その「行けそう」のラインがアメリカ視察を経て引き上がりましたね。可能性があれば行かせるっていう。なんか全然答えになってないですね笑

侑馬

うんうん。それをもうちょっと抽象度を上げていくと、アメリカは、自分の責任だからと言って、そこから先は無関心になると思うんだけど、日本人は気づいたり、察したりするのが上手だよね。察していながら見守るというところまでできる。

チャレンジして、もし本当に落下してきたら受け止められる。アメリカだと落ちたら落ちたね、という感じだと思うんだけど笑
日本だったらそこでもう1歩行けるんじゃないかと思う。僕自身も「じゃあ頑張ってね」みたいな感じで、突き放しているようで、ちゃんと見守ってもらっていたっていう経験をたくさんしてきたし、そういう風に育ててくれた先輩がたくさんいると思ってて。


だから、やれたよって戻ってきた時にも一緒に喜んでくれる。個人主義が行き過ぎると、やれたよっていう成功も「だから何」ってなっちゃうしね。


その人の可能性の幅を広げたり、可能性に蓋をしないということが大事であって、見守ってうまくいったら一緒に喜ぶ、失敗したらどうやったらうまくいくのかを一緒に考えてあげるっていうことができればいいのかなっていう風にすごく思う。

で、次のチャレンジもちゃんと見守ってあげる。そういうのが多分本当に本質的な人の成長のサポートなのかなっていう。こういう繊細なことまで見れるのは日本の文化ならではじゃないかと思うし、日本だったらもっとできるんじゃないかな。

響希

はい、言語化ありがとうございます。笑

ー ゆり子さん(KEIPE社員)が研修でやってくれたサポート資源の4つの分類(※6)あったじゃないですか。あれで評価っていう項目があったのが、私の中では新発見で。他者からの評価がリソースとして自分を助けてくれてるってところに納得したんです。で、それが今の見守るって話につながるのかなって思って聞いてました。

ーだから、そういう見ててくれる存在ってすごく重要だなと、子育てでも感じていて。子供って勝手にやりたいって動いて、成功するんだけど、でも絶対ふと親を振り返るんですよ。何か、「やったよ!」みたいな。笑
何かもう本能的に、親っていうか見守る存在は必要なんだなって思いました。

侑馬

だね。そして対大人であれば、物理的に見てなくても、見ていることができる。僕も社員全員をずっと見ておくことはできないけど、できる限り収集してる情報から、人を通じてフォローしたり、様子を伺ったり。なるべくそんな役割を果たせるように見てます!笑

まあ、多分アメリカもそんな冷酷なわけではないと思うんだけど、日本の文化の良さってそういうところにありそうだな〜と感じてます。

みんながチャレンジして当たり前っていうよりは、やっぱり見る目線って育む視点だと思うんだよね。だから、見る人がいることによって成長スピードが全然違う。植物もそういうじゃん。なんかこう、声かけたり、お世話する人によって育ち具合が違うって。人もそうだなと思って。そんなことができるチームでありたいね。

響希

はい!がんばります!笑

ー 短い時間でしたが、とってもいい話が聞けました。今後の取り組みが楽しみです!今日は2人ともありがとうございました!

響希・侑馬

ありがとうございました〜

※用語解説