人種やハンディキャップを超えて、多様な人が働くアメリカの「キャリア支援」とは? ワシントンD.C.視察対談!(前編)

じつは、2024年2月27日〜3月15日までの約3週間、KEIPEの選抜メンバーで、アメリカ視察に行ってまいりました!(円安痛かった〜)。ポートランド、ワシントンD.C.、ニューヨーク、アイオワと周ってきましたが、今回はKEIPEのスタートした事業でもある「障がい者のキャリア」に関して学んできた経験をシェアする対談記事です。

お話しするのは、アメリカの大学でダイバーシティを学んだのち、KEIPEに新卒で入社し、現在3年目の荻野響希(以下:響希)と、代表の赤池侑馬(以下:侑馬)。

日本とは全く異なるアメリカのキャリアサポートの仕組み。異文化に触れる驚きを追体験いただける内容だと思います! 福祉が身近な方も、そうでない方も、どうぞお楽しみください。

もくじ

なぜアメリカ視察?

− はじめに渡航のきっかけから聞いてもいいですか?

侑馬

まず、社内で自分との約束を守ろう!なにかひとつでも日々チャレンジしよう!という流れで、僕はTOEIC650点取るって目標を設定したんですよ。元々270点なんだけど……笑

その中で、英語にアンテナを立てて仕事していたら、自分たちがやっている「キャリア」という分野に関して、アメリカで学べることがたくさんあるという情報をもらって、行ってみようと思ったのが渡航のきっかけですね。

アメリカは、障がいのある人だけじゃなくて、移民や人種の問題で「働きづらさ」に関して日本よりも複雑に難しいところがあるんだよね。それをどうしているのか実際に見に行こうと思って。

響希

ですね。現地では、キャリアに関しての取り組みをしている大学2つと、政府と州が運営するWorkforce Technology Center(以下:WFTC)という場所を見学させていただきました。WFTCは、アメリカで50年以上、障がい者の就労をサポートする公的な支援機関ですが、日本人はここ30年で初めての来訪者ということで、5名の幹部の方々が大歓迎してくれて、各所の案内と対話をしてくれました。

・George Mason University
・University of District of Columbia
・Workforce Technology Center

− 実際、本当に多様な人が働いていたという印象はあった?

響希

そうですね〜
日本は移民がまだまだ少ないから日本の仕事を日本人が担うことが多いですよね。対してアメリカでは、建設系・飲食系は移民が担っていたりするって話は海外の友人と話した時に出ました。いい面も悪い面もあって、だから日本はダイバーシティが進まないよねってこともあるし、アメリカで言うとじゃあ移民がいなくなったらそれ誰が担うの?って国が立ち行かなくなるって問題もあったり。

侑馬

当たり前だけど、日本とアメリカの持つ歴史や文化が違うから。アメリカは移民から始まって奴隷制度もあってっていう歴史がすごく今にも影響していて。一体感があるというよりは、個が強い印象はたしかにあるなと。ただ、単に比較していい悪いだけではないという視点ではいたいですね。これはCOTEN RADIO(※)のアメリカ編を聴いてみてほしいです!笑

「自分も連れていってください!」

– じゃあ次に、響希くんの直談判の話を聞きたいです!笑
(今回の渡航は、会社の指名ではなく立候補で代表と2名が参加してきました。)

響希

ふふふ笑
そうですね〜去年の年末くらいに、自分が海外視察の話を全く知らない状態で、同僚から「響希もアメリカ一緒に行くんじゃないの?侑馬さんに聞いてきなよ!」みたいな話をされて、初めて渡航のことを知りました。

自分は、とにかく入社前からKEIPEで海外のことをやりたいって話していて。それは今も変わらないことなのですが、でも何をしたらいいか分かんないっていうのはまだ今もあって。とにかくまず海外に出て自分を試してみたいって気持ちを正直に話しました。

あとは、今回見に行くキャリアセンターが、今自分が現場でやっていることのアメリカバージョンを見れるっていうことで、すごくそこも興味がありましたね。

ただ、今の自分の力で大丈夫かなっていうのと、言ったはいいけど断られるかもしれないっていう覚悟をして直談判に行きました笑

侑馬

いや、何の迷いもなく言ってきたけどね笑笑

響希

ええ〜!!笑
めちゃくちゃ心臓バクバクだったんですよ!!ダメって言われたらどうしようとか。

侑馬

基本的に直談判されて断れないじゃん笑
やりたいって言ってんのにさ笑

僕も、響希は入社前から海外のことに対して想いがあるの知っているし。チャレンジする資格があると思って、事前に事業部長とかには一緒に行くと思うって共有してたんだよね。でも、興味本位で行きたいでーす、みたいなやつが来ても「無理だ。お前英語勉強してから来い。」ってなりますよ、それは笑
まあ何も言ってこなかったら、俺一人で行ってたけどね!
自分で切り拓いたってことだよね。

響希

わ〜ありがとうございます。

ー じゃあ本題に。今回の視察で一番印象に残ったことは?

響希

えーっと、キャリア的なことですよね、supremeのお買い物の話とかじゃなくて…笑

侑馬

おい笑

ー あ、そうそうちょっとここで「キャリア」という言葉を整理したいです。日本で言うと仕事する上での経歴のようなイメージが強いけど、ここでは少し意味が違う?

侑馬

うん。視察してきたアメリカで言っている「キャリア」は単に仕事上のことだけじゃなくて、元々自分自身が持っている関心ごととか、心からの欲求みたいなものを大事にした先にある働くということまで包括してるイメージですね。

響希

確かに、日本語でキャリアアップ、とかキャリアチェンジっていう風に使う時よりも、もっと深いところまで意味してますね。

衝撃的だった、Workforce Technology Center

Workforce Technology Center入り口

響希

それでえーっと、まじめに1番印象に残った場所でいうと、WFTCですね。
そのセンターが、障がいを抱えている方のキャリアサポート、キャリア支援に特化した施設だったんですよね。本当にそこに住み込みで職業訓練みたいなこともできるような場所で。センター内に働く現場をそのまま再現した、大人キッザニアみたいな施設が何個も分野ごとにあって!

いくつもあるんですけど、例えばCVSってアメリカでは有名なドラッグストアの商品やレジまでを完全に再現したエリアとか、あとはペットショップ。模型みたいなものがあって、トリミングやシャンプーの仕方とかが練習できるエリアがあったり。あと、社員向けの食堂の中で実際に調理の訓練ができるようになっていたり。
教える側のスタッフさんも、福祉従事者ではなくもともとその業界のプロでやっていた方、というところもすごいなと思いました。

CVSの店内を再現した訓練施設

響希

アパレル・販売のお仕事をしたい方向けの場所として、古着を集めて販売をしてる店やギフトショップを施設内に構えていて、スタッフとして働くみたいなエリアもありましたね。

侑馬

もうとにかく規模がすごくて。遊ぶためのボウリング場とかもありました笑  車の板金とかもあったよね。

板金工場の訓練施設

施設内のボウリング場

ー じゃあそこで訓練した後に、リアルな現場に就職するみたいな流れですか?

侑馬

そうだね、全部企業と提携してる。
例えばスターバックスだと、実際の店舗の横に、スターバックスが用意したトレーニング用のテスト店舗があって、そこでトレーニングしたら、その隣の本番店舗に採用みたいな流れが作られてたりする。日本ではそんなこと全然できてないよね。

だから、山梨で企業とか行政を巻き込んで、でかいキャリアセンターを作りたいと思った。
もうずっと見学しながら、「あ〜いいの思いついちゃった!」とかどうしたら事業化できるだろうって考えてぶつぶつ言ってた笑

響希

たしかに、ずっとなんか言ってましたよね笑

驚いたのは「専門性の高さ」

ー そんなWFTCのような施設を目の当たりにして、響希くんは何を感じましたか?

響希

そうですね。すごい専門性が高いなと感じました。
何て言うのかな、職業訓練の現場でセンター職員が代表して調理を教える、とかじゃなくて、元々フード関連で働いていたプロが入ってくる。専門知識を持っている人が教えに来るっていうところだったりとか。

あとは障がいについても、例えば聴覚障害抱えてる人には、聴覚障害を専門に学んできた人がサポートに入る。福祉全般を学んできた人がサポートに入るのではなくて、特化した人が入ることで、より的確なサポートができますよね。

障がいってひと括りじゃなくて聴覚障害、視覚障害、発達障害、みたいな形で専門領域が一人一人違っていて、その方が必要とするサポートを提供する形でした。

響希

KEIPEで、今自分が2年間働いてきて、多分、日本全般で割と言えることだとは思うんですけど、福祉施設でぼやっと、ほんとに専門的な知識がない中で関わって、中途半端なサポートで終わっちゃう、、みたいなことが多いと思うんです。
けど、アメリカのWFTCでは、入ってきた障がいを抱えてる方に対して、アセスメント(※1)をしっかり一人一人とって、その方がどの分野に行きたいのかを見定める。だから、アセスメントを取った後にブレがないっていう話があったんですよね。やっぱりこっちにしたい、とかいうような。

侑馬

大学も一緒で、英語が第2言語とか、移民の人とか障がいのある人とかが頼ってくるんだけど、基本的にはキャリアセンターを窓口にHR DEPARTMENT(※2)みたいなものがあって、そこからもうパッパパッパ、専門家にパスしていく仕組みになってる。

ー なるほど。キャリアセンターが、何もかもそこで受け止める場所というよりは、アセスメントで見極めて専門家にパスする役割ってことですね

侑馬

そう。で、大学卒業後もいつでも来ていい仕組みになってる。そういう開かれた環境があるんですね。あと、企業とちゃんとリレーションがある。日本の大学のキャリアセンターってさ、学生相談窓口みたいなイメージが強いよね。キャリアのプロとして認識されてないと思う。

ー たしかに、就活でもあまり使った記憶がないかも・・・

侑馬

でもそのアメリカの大学のキャリアセンターは、個人のキャリア、つまりその人自身の価値観をより掘り下げてくれるような面談もしてくれるし、企業や専門家とも繋がりがある、もうとにかくプロなの。これを日本にも作らなきゃダメだと思ったんだよね。

響希

そうですね、大学内でも窓口が分かれていて、キャリアサポート全般だったり、障がいを抱えてる方に向けてだったり。
で、そこから外部の専門分野の人との繋がりがあるので、何かあった時にすぐにサポート体制が整えられる環境にしていて。そこに対してどういった経過観察が必要なのか、大学内で対処するのか、それとも専門の方が入るのかまでアセスメントを取っていくという話がありました。

ー じゃあとにかく、そのWFTCにしろ、大学にしろ、キャリアに困って自分が行ける場所に行く。そうすると、キャリアカウンセラーがアセスメントをとってくれて、自分の興味関心をちゃんと掘り下げた上で、仕事までの道筋を一緒に立ててくれるって感じでしょうか。
しかも、そこに対して必要な医療的な専門家、就職に対しての専門家に、どんどん繋いでいってくれる。

響希

はい、そんな感じです!

(※)用語解説