就労支援A型の利用者から社員へ。KEIPEが信じる個の力

「障がいを特別なものにせず、誰もがそこにいていい社会にする」
そんなVisionを掲げるKEIPEでは、障がいの有無や支援する側・される側といった枠を超え、一人ひとりが個性を活かし活躍しています。

今回ご紹介するのは、障害者就労継続支援A型事業所のメンバー(サービス利用者)としてKEIPEに加わり、現在はリクルーターとしても第一線で活躍する岩下咲月(以下、咲月)さん。そして、彼女の可能性を信じ続け、成長を温かく見守ってきた就労支援事業部長の風間祥吾(以下、祥吾)さんです。

不安を抱えながらも一歩を踏み出し、働く喜びを実感しながら進んでいくお二人のストーリーを通して、KEIPEが大切にしている「やってみ」スピリットや、目指す働き方の未来を語っていただきました。ぜひ最後までご覧ください!

※用語解説

〇障害者就労継続支援A型事業  障がいによって現時点では一般企業などでの就労が困難な方を対象に、雇用契約を結んだうえで就労の機会を提供し、就労を通じて一般企業などで働くために必要な知識やスキルの向上をサポートする障害福祉サービスです。

〇メンバー  KEIPEにおける障害者就労継続支援A型事業のサービス利用者のことを指します。現在は全社員総活躍企業として、障がいの有無や雇用形態に関わらずKEIPEで働くすべての人がKEIPEの社員・仲間として活躍できる環境を目指しており、呼び名も社員との区別をつけない取り組みも始めていますが、この記事では便宜上「メンバー」の呼称を使っています。

出会いは面接から―「続けられないと思います」

―お二人の出会いは面接だったそうですね。

咲月

はい。A型を利用したいと思って、見学と体験を経て面接を受けました。そのときが初対面です。

祥吾

面接だったんですけど、いきなりヨガの話で盛り上がったよね(笑)。YouTubeで同じ先生を見ていて、「あの先生知ってるの!?」みたいな。

―面接といえば緊張感のある場を想像しますが、とても自然体だったんですね。

咲月

形式ばった感じがなく、雑談から入ってくれたんです。仕事の経歴だけでなく「今なにが楽しいの?」って聞いてくれて。安心感がすごくありました。

―当時の咲月さんは、どんな気持ちを抱えて面接に臨んだのでしょうか。

咲月

「続けられないと思います」って伝えました。これまで短期離職が多くて、明日も来られるか分からない感覚があったんです。

祥吾

でも「できるかどうか」より、「どう一緒にやるか」が大事なので。できないことが前提じゃなく「不安です」と正直に言える人は伸びると思っていました。

「自分がよく分からなかった」学生時代、そして自分を責め続けた日々

―これまで、生きづらさを感じていたと伺いました。

咲月

幼稚園のころから生きづらさがあって。小学校では勉強がうまくいかなくて、「自分はできないんだ」って思っていました。 中学生になってからは、元気なのに教室に行けなくて、不登校になったこともありました。周りからは「元気なのにどうして?」って言われて。でも自分でも分からなかったんです。

高校では専門学校に進学し、料理という好きなことに出会えました。でも、社会に出てからは働き続けることが難しくて、苦しかったです。

―社会に出られてからも葛藤があったんですね。

咲月

「なんで続かないんだろう」とずっと自分を責めていました。苦しさが重なって病院に行ったんです。そこで初めて自分の特性に気づかされ「やっぱり」と思う反面、周りにどう説明すればいいのかは分かりませんでした。

―そんな中で、KEIPEと出会ったんですね。

咲月

最初はA型で働くことにポジティブになれませんでした。「普通」に働けない自分を認めるみたいで。でも見学や体験に来てみたら閉鎖的な感じがなく、ここならやっていけるかもと思えました。

他だと「こうだからダメ」と言われがちでしたが、KEIPEでは「ここがいいよね」と見てくれる。働きづらさは自分の弱さだけじゃないと思え、不安は少しずつ安心へ変わっていきました。

レストランでの葛藤と、次のステージへ

―入社後、レストラン部門※1で働かれていたときに転機が訪れたと。

咲月

接客や調理を少しずつ任せてもらえるようになり、やりがいを感じていました。ただ、もっとお客様に喜んでもらいたいという思いがどんどん強くなって。でも自分の持っている役割だけでは熱意を全て形にできず、もどかしさを抱えていたんです。

祥吾

組織での衝突は、「やりたくない人」と「やらせたい人」がぶつかることが多い。でも彼女は違いました。現場のスタッフ同士で「もっと良くしたい」という想いが強すぎるあまり、その方向性でぶつかっていた。「もっと関わりたい、価値を生み出したい」という思いが強かったんです。才能がある人ほど、天井が見えた瞬間に苦しくなる。だったらその天井を取り払って、ステージをつくればいいと思いました。

―そこで提案されたのが、リクルーターという役割なんですね。

祥吾

咲月さんのこれまでの経験や、見学に来る方へ「働くって楽しいよ」と伝えたいという想いは大きな武器になるなって。だからリクルートの業務をやってみないかと提案しました。

咲月

迷いはなかったですね。体験に来る方や関わる方たちに、「働くって楽しいよ」って伝えたい気持ちがあったので。

―そして、2026年2月1日に社員として登用されたんですね。社員になるにあたって、ご自身でプレゼンもされたとか。

祥吾

はい、過去の苦しみも全部話して、「障がいの有無に関係なく、みんながフラットに働ける社会を体現したい!」と宣言してくれました。

※1 レストラン部門
山梨県立美術館内にあるユニバーサルカフェ&レストラン「COLERE(コレル)」。スタッフ12名のうち10名が知的・身体・精神などの障がいを持つ「メンバー」で構成されています。メニュー開発から調理、接客、マーケティングまで、障がいの有無にボーダーを引かずに運営されているレストランです。

「働くって楽しい」を体現するー社員としての挑戦

―社員として働き始めて、ご自身や周囲に変化はありましたか?

咲月

以前は、できないことがあると自分を責めていたんです。今は「次どうしたらいいかな」と考えられるようになりました。

祥吾

ミーティングでも積極的に発言し、成果を自ら報告してくれます。挑戦して向き合う姿勢が他のメンバーにも強烈な刺激になって、「自分ももっとできるはず」と行動を変え始めた若手もいます。組織が良い形で循環し始めています。

―KEIPEの支援において、大切にしている考え方は?

祥吾

「働かせてあげたい」ではなく、「一緒にビジネスしよう」というスタンスです。過剰なサポートをするのではなく、失敗してもいいから「やってみる」こと。一緒にチャレンジして、自分の可能性にワクワクできる場をつくりたい。

福祉に向けた僕自身の原点は、高校生のときに祖母を亡くした経験です。大切な人を守れなかった悔しさから「人を助けたい」と福祉の道へ進みました。でも現場に入ると、決められた業務をこなすだけで「働くってつまらないな」と感じる時期があった。

だからこそ自分が組織をつくるなら、「働くって楽しい!」と自分自身も思えて、皆と一緒に体験できる場にしたい。KEIPEでは、メンバーだけでなく、僕たちサポーター自身が成長と働く喜びを分かち合うことも大事だと思っています。

「あなたは弱くない」

―最後に、生きづらさを感じている方や、就労に一歩踏み出せない方へメッセージをお願いします。

咲月

「自分が弱いわけじゃない」って伝えたいです。続かなかった時間も、苦しかった経験も、全部大事な過程です。いきなり決めなくていいので、自分のペースで、自分らしくいてほしい。あなたが抱えている苦しさは、絶対に誰かを助ける経験になります。

祥吾

人は一人で生きていない。ご縁に感謝して、やってみる。その挑戦が、仲間の可能性を拓く。僕たちは、可能性にワクワクできるような場をこれからも広げていきます。

***

「障がいを特別なものにせず、誰もがそこに居ていい社会へ」。 遠回りをしても、苦しかった経験が誰かの背中を力強く押す原動力になります。 KEIPEはこれからも、メンバーの可能性に蓋をせず、ともに挑戦し、「働くって楽しい!」を広げ続ける組織であり続けます。

「自分には難しいかもしれない」「続けられるか不安」 そう感じている方もいるかもしれません。 何事も、最初の一歩から。 まずは見学や体験から、あなたのペースで。 KEIPEは、挑戦できる場所を用意してお待ちしています。

【この記事を書いた人】

松川 清美|フリーランスライター
インタビュー・取材記事を中心に、企業や団体で働く方の想いやストーリーを伝えるライティングを手がけています。対話を通じて、その人らしさや仕事の背景を言葉にすることを大切にしています。


📝 執筆記事:

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