もくじ
フードコートみたいに、雇用をみんなでシェア!
ー早速ですが、ウィズダイバーシティってなんですか?
侑馬
しくみが若干複雑なんですが(笑)、中小企業と障害福祉団体が協力して、障がいがある方たちの仕事を共同でつくる組合です。
この組合にはいま、ぼくたちKEIPEのような障害者就労支援事業所※2が、3社加盟していて、障がいがある方が担う「仕事メニュー」を各社それぞれが持っています。3社の枠を超えてメニューを組み合わせることができるのも魅力のひとつですね。
※2 障害者就労支援事業所
一般企業への就職を目指す障がいや難病がある方に対し、就職に向けた準備から就職活動、就職後の定着支援まで、さまざまなサポートをしている事業所
理由1 障がい者雇用を進め、法定雇用率も達成しやすく!
侑馬
これまで地元山梨の企業さんから「障がい者を雇用したい」っていう相談をいただいても、なにもできなかったんですよ。例えば、中小企業さんとKEIPEが直接業務提携をして、うちの社員5人が企業さんに行って働いても、実質的には雇用しているのに、法定雇用率にはカウントされなかった。
でもこの組合に参加すればカウントされるようになるので、地域の企業さんにとってすごく入りやすくてプラスになる取り組みだなって思ってます。
ーフードコートの「共通キッチン」は、仕事メニューだけじゃなくて、障がい者雇用に関する研修や相談、制度に関する情報提供など、共通のサポートも提供するから、各店舗は障がい者雇用のノウハウがなくても、安心して一歩踏み出せますね!
そして、フードコート(組合)に参加する店舗(中小企業)が多くなればなるほど、もっとたくさんの障がいがある方を雇用できるようになって、結果、各店舗とも法定雇用率の目標を達成しやすくなるって訳ですね!
理由2 KEIPEメンバーの「やりたい!」を叶えるチャンス
美映
例えば「ちょっと厳しいかな」って感じるお仕事を企業さんからもらってきても「メンバー※4のみんなできちゃうじゃん!」ってことが本当に多いです。(笑)「就労支援事業所での受託業務の単価は1個1円」の時代も歴史的にあったと思いますが、KEIPEでは自分の給料は自分で稼ぐことが出来つつあって。
今回KEIPEが加わることでウィズダイバーシティ全体の仕事メニューが広がったと思いますが、もっと増やしていきたいですね!
※4 メンバー
KEIPEにおける障害者就労継続支援A型事業のサービス利用者のこと
美映
ローランズ※5さんが提供しているお仕事で、メニューづくりのヒントになるなぁ、おもしろいなぁ、と感じたのは、「目の見えない方が企業に行ってマッサージをする」っていうもの。
ウィズダイバーシティって、メンバーの「やりたい!」を叶えられるってことでもあるんですよね!「働く喜びを伝える講演会」とか良くないですか?
※5 株式会社ローランズ/一般社団法人ローランズプラス
花のギフトや空間装飾などのサービスを通じて障がいや難病と向き合うスタッフを多数雇用する花屋。ウィズダイバーシティの発起人は、㈱ローランズの代表・福寿満希さん。
侑馬
そんな感じで、仕事のメニューも営業戦略も、現場で働くメンバーと一緒に考えていったらいいよね。
「できない」にフォーカスしないで、みんなをもっとフラットな目で見ると、めっちゃできる人、めっちゃいるんですよ。(笑)
美映
みんなの強み=価値、って気づけたらいいですよね。だからメニューづくりのプロセスって、自分の強みに気づけて仕事にするチャンスなのかなって思って。
同時にどんなメニューが欲しいのか、企業側にアプローチしてみてもいいですよね。楽しい世界線!ワクワクします!
【共同雇用】から、企業への【直接雇用】を目指して
侑馬
ウィズダイバーシティは「直接企業と雇用契約を結んでいることにはなっていないのでは」と、指摘を受けることもあります。
ここがポイントなのですが、まず、ウィズダイバーシティに参加した企業は、「新たに障がい者雇用が生み出される」規模の業務を発注します。
さらに、ウィズダイバーシティに参加する一定規模の企業は、自社雇用するというルールもあります。
KEIPEが目指しているのは、ウィズダイバーシティをきっかけに直接雇用をつくって「障がいを特別なものにせず、誰もがそこに居ていい社会」というビジョンの実現に繋げることで、それはすごく意識しています。
美映
障がいがある方の雇用に関して、企業さんにとっては「わからない不安」が一番大きいのかなって思っています。
でも例えば、あるメンバーに会って一緒に働いてみたら、「ルールは必ず守るし、わからないことは聞いてくれる。この方の働き方が好きだから一緒に働きたい」と、不安が解消される変化を見てきました。
だから、私はウィズダイバーシティがこれまで全くなかった企業さんと障がいがある方の接点を生み、相互理解ができたらって思っています。ウィズダイバーシティを通じて、「障がい者の雇用全然できるじゃん!」みたいな感じに価値観が変わったらいいなって。
実際、こういう関係性が続いたことで、自社雇用につながったりした事例も、ウィズダイバーシティでは生まれているんですよね。
侑馬
企業側の「よくわからない」って不安がある状況へKEIPEが合わせていくと、どうしても距離が生まれると思うんですよね。
でもウィズダイバーシティを通して不安が解消されて「一緒に働ける!大丈夫!」って距離がグッと縮まった時に「働ける場」になるんだろうなって。
個人の障がいをどうするのかっていう観点が強いんですけど、どっちかっていうと【社会にある見えない障がい】をどうするかへの取り組みでもあるんだと思ってます。
美映
企業と障がいがある方の間にウィズダイバーシティがワンクッションあることで、「不安」っていう企業側の一番大きな障がいを取っ払って、ワンステップ踏み出しやすくしてくれるなぁって感じてます。
これからのチャレンジは、KEIPE内側からの成長
侑馬
一方で日本は法定雇用率とか言ってられないだろうとも思っていますね。人口が減っているので。
これからは多様な人が働ける企業じゃないと、生き残っていくことも難しい時代になっているなと感じています。
ただ、「企業やひとを変えてやろう」っていうアプローチでは変わらなくて、自分が変わらないと周りも変わらないっていう実感があります。
ウィズダイバーシティに関しても、KEIPE内の各組織が、他社の方々に話してもらえたら、「それやってみたい!」って広がるかもしれないので、社員みんなの理解が深まって内側から変わっていけるといいですね。
美映
企業さんに「仕事ありませんか?」って聞くより「こういう仕組みがあるんですよ。一緒にやりましょうよ」のほうが言いやすいですしね!
あと、スモールステップかな、って感じました。まずは「障がい者の法定雇用率が未達成なので納付金を払いました。でもいっか!」みたいな価値観を、「商品・サービス受け取れるし、いいか!」ぐらいに変えてもらって、そこからこの仕組みの価値を高めていけたらいいのかなぁって思っています。
目指すは、法定雇用率や障がい者手帳がなくてもみんなが一緒に働ける世界ですけどね!
侑馬
ほんとそうだね!
この記事を書いた人 松川 清美
ライター/NGO職員/3児の親
●松川が執筆したKEIPEの他記事:「山のようにめぐる世界を目指して」https://taneto.jp/2024/03/04/keipe/
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