
自分を満たすことが周りも幸せにする
ー改めて、MARLU SOUP立ち上げ時の思いを聞かせていただけますか?
有花
MARLU SOUPが生まれたのはKEIPEのオフィス移転がきっかけでした。
福祉をもっと街にひらいていきたい、端的に言うと、街の人の目に触れるエリアでかっこよくやりたいという目的での移転でした。キッチンスペースを作ったのも、社食の提供のためにという名目で。※1
でも雑居ビルの2階なので、外部の人の行き来をつくるためにはどうしたらよいだろう、と考えて、キッチン設備を使って何か飲食店をやろうかという話になりました。
特に中身は決まっていなかったのですが、当時、その状況を見ていて、私だったらこんな場を作りたい!というエネルギーがどんどん湧いてきてしまって…笑
コンセプトを考えて、場をつくらせてもらうことになりました。ベースになっている原体験は、1歳の息子を連れて移住したばかりのころの経験で。
私は当時県外から移住して来ていて、友達や雑談できる知り合いもいなかったんです。そんな環境で子育てをする中で、社会の中で自分がいてもいなくてもいい存在なんじゃないかという寂しさを常に感じていて、当てつけのように自分の存在意義を感じられる仕事に没頭してしまいました。
その頃は、常に自分の不幸を誰かのせいにして、怒りまくってましたね笑 それで案の定、体調を崩してしまったんですよね。
そこで、漢方薬局に頼って身体を整えたら、精神状態も整ってきて。あ〜自分の幸せは、じぶんで取りに行かなきゃいけないんだって身に染みたところから、やっと歯車がうまく回り出したんです。
※1 KEIPEでは就労支援のみんなの健康状態を気に掛けた社員からの発案で、2022年から無料の社食提供をスタートしています
有花
そんな経験を経て、世間や見えない誰かの意見にとらわれないこと。しっかりと自分が自分のことを労り、自分のために生きてあげる。つまり「自分をきちんと満たす」ことが大切だと身をもって気づきました。自分を満たすって自己満じゃなくて、自立の一歩だと思っていて。周りの幸せにもつながるとても大事なことですよね。
そこでゆるくまあるく、穏やかに自分をいたわる。来てくれた方が、どんな人も「ここに居ていい」と安心できる体験をして、また一歩自分の足で踏み出せるパワーをもらえるような場所を目指そうと、MARLU SOUPがスタートしました。
ー孤独感あるの分かります…!働いていても子育てしていても、気づかないうちに疲れていたり、無理をしていたりして、自分を大切にできていないときってありますよね。
有花
そうなんです。私の場合は子育てと移住がきっかけで、その大切さに気づきました。あと、食べ物の力ってすごいなと感じたこともあって。
ーどんなお話ですか?気になります!
有花
KEIPEの社員で1度、仕事をお休みしていた子がいたんですが、私が社食の立ち上げをしているのを見て「手伝いたい」って言ってくれたんですよね。それでお願いしたら、社食を食べてみんながとても喜んでくれる。「ありがとう」と言ってもらえるってことがすごく嬉しかったと言っていて。
実際にそこから徐々に仕事に復帰していったんです。ダイレクトに誰かを笑顔にできる、提供する側もしあわせになれる、食の力ってすごいなと感じました!
ーKEIPE社員の復帰のきっかけにもなっている事業なんですね。
まちの中の居場所になれた実感
ーオープンから3年経ったMARLU SOUPは、立ち上げ人から見てどう思いますか?
有花
3年間で特に未就学の子育てをしている世代の方には、まちの中の居場所として認識してもらえるようになった実感があります。中には、子どもたちと休憩する場がほしいので、土日もオープンしてほしいとの声もいただきます。花小路がオープンしたこともあり、甲府の街にもだんだん賑わいが増えてきましたよね。
通絵
KEIPE内でもこの3年間はたくさん変化がありました。 古道具と古材のお店「Cycle(サイクル)」、ユニバーサルカフェ&レストラン「COLERE(コレル)」 のオープン、今年5月には、地域の資源を「最大源」に活かすため、規格外の農作物も使ってフルーツやジェラート、干し芋を作って販売する「nouto(ノウト)工場直売所」がオープンしましたよね。
各店舗それぞれに地域とのつながりが生まれていて、nouto工場直売所でつながった農家さんが作るとってもおいしいぶどうジュースをMARLUやCOLEREの店舗で販売したり売ったりもしましたね。
有花
そうそう!たまたまMARLU SOUPに来たことがきっかけでKEIPEを調べて、「ここで働きたい!」って言って入社してくれた社員もいました。KEIPEを知ってもらうきっかけになれて嬉しいな〜と感じたのを覚えてます。
MARLU SOUPを通してつながる人
ー人・地域とのつながりで生まれてきたものもあったのでは?
有花
そうですね〜。お客様やスタッフ含め、たくさんの出会いの中で、自然発生的に生まれたアイディアをMARLU SOUPで形にしてきました。
例えば、誰でも参加できるインクルーシブなイベントを開催したいので、手話を教えて欲しいって相談されたのがきっかけで、「手話のじかん」というイベントを開いたり、スタッフのつながりから、産婦人科の先生をお呼びして性教育などのお話会を開いたりしたこともありました。
あとは、恥ずかしながら飲食店経営のど素人だったので、メニューもたくさんの地域のプロに頼らせてもらいました。レシピから教えてもらったり、試作を味見してもらったり…。農家さんに畑で教えてもらったこともたくさんあります。
今思い返しても、MARLU SOUPは本当にまちのみなさんに支えられ、助けられてなんとかできたって感じですね笑。
ーメニューや扱っている商品、空間を通してその先に関わる農家さんやまちの人とつながることのできる場所になってきているのかもしれませんね。
MARLU SOUPがつくるみんなのキッチンへ
ー今後、MARLU SOUPをどのようにしていきたいかなど考えていますか?
通絵
そうですね〜、今までやってきたことや地域のニーズを考えても「お子様連れでも気軽に来ることのできる場所」は大切にしながら残していきたいですよね。ここを1番に考えながら、お店に来れば商品やメニューを通じて新しい出会いがある。
最終的には、街に関わるたくさんの人をつなぐハブのような存在になれたらいいなって思います!実際お店も会社と同じように、少しずつ変化していってもいいなって思うんですよね。
有花
そうだよね〜、会社もお店も生態系みたいなものだって思うんです。常に変化していくのが当たり前のものかなって。立ち上げの思いや、今ある価値の維持にこだわりすぎず、よりよくしていくためのリニューアルだと思ってます。正直、今は発起人の私が産休に入ってしまって現場にいることができないし…。
ひなちゃん(通絵)にはやってきた想いは十分伝わっていると思うので、ここからさらに地域にとっても、KEIPEにとっても、関わる人がみんな幸せになるような場作りをしてくれるって安心して託そうかなと。
ー話を聞いていて、KEIPEのビジョンである「障がいを特別なものにせず誰もがそこに居ていい社会にする」を体現するような場所にもなれそうと思いました!
有花
もともと福祉と地域の溝を埋めたいという思いもあったから、そうなったらすごくいいですよね〜!いろんな属性の人が自然と混じり合うような。
通絵
今後はMARLU SOUPが地域のなかで風習や常識にとらわれず、人種・宗教・年齢・性別・国籍・病気・生い立ちといった、生きる上での”障がい”を特別なものにしない場所になれればうれしいですね。
ーMARLU SOUPは、最初に会社のキッチンから始まって、今は子育て中の方を中心にしたキッチンになって。今後は、街のキッチンになれるかもって思いました!
有花
それいいですねー!そうなったら嬉しいな。
通絵
街のキッチン!わくわくしますね!