
もくじ
「売れない」からの出発 農家さんとともに歩むnoutoの原点
ー市場に出回らない規格外の農作物に着目した背景を、改めて教えていただけますか?
友美
私も和希さんも桃農家に生まれ育ったのですが、農家さんたちは、毎日いきいきと一生懸命働いているんですよね。「小ぶりだから」「色が良くないから」といった理由でせっかく育てた農作物を捨ててしまうのは本当にもったいない、と感じていました。
でも、農家さんは日々の作業に追われ、規格外の作物を活用する余裕がないのが現状です。私たちnoutoが間に入ることで、救えるものがたくさんあるんじゃないか、新しい可能性を広げられるんじゃないか、とそんな風に考えました。
和希
ただ、誤解してほしくないのは、農家さんは決して規格外品をつくりたくてつくっている訳じゃないんですよね。むしろ「最高のものをつくりたい!」という情熱とプライドを持って、日々作物と向き合っています。だからこそ、僕たちは「加工するから、規格外品だけを安く譲ってください」というような関わり方はしたくないと思っています。
今回、工場直売所をオープンできたのは、規格外品だけでなく、秀品※1も生食用として販売させていただき、農家さんとの信頼関係を築いてきたからです。
農家さんが困っているときに、規格外品を適正な価格で買い取ることができる。そこが、僕たちnoutoの強みだと考えています。
※1 秀品
市場において高品質と評価され、高価格で取引される農作物のこと。秀品以外の農作物は、一般的に規格外品、訳あり品、不良品などと呼ばれる。
ー出荷先に困らない秀品を、他でもないnoutoにするのは、農家さんにとってどんなメリットがあるんでしょうか?
和希
例えば、桃やブドウの場合、以下のようなメリットがあります。
● noutoが農家さんのもとへ集荷に伺うため、出荷の手間が省ける
● 収穫コンテナに農作物を入れた状態でnoutoに引き渡しできるため、梱包資材費や梱包の手間を削減できる
高齢化や後継者不足など、農業に関わるさまざまな課題を認識していましたが、なかなか一歩踏み出せませんでした。今回工場直売所をオープンすることで、大きく踏み込むことができると思っています。
ー工場直売所をオープンすることになった背景を教えていただけますか?
友美
生食用の桃とブドウを販売してみたら、想像以上にたくさんの方に喜んでいただけて。「こんなに売れるんだ!」と正直驚きました。 でも、うれしかったのと同時に、「農家さんを十分に助けられなかった」という気持ちが残りました。
実は、お問い合わせをたくさんいただいたんですが、糖度不足のものや輸送に耐えられないほど完熟したもの、販路が未開拓だったものは、取り扱いをお断りせざるを得なかったんです。「地域のために何かしたいと思っていたけれど、全然できていなかった。一部の農家さんとしか関われていなかった」と痛感しました。
もし加工ができれば、もっとたくさんの農家さんを助けることができるし、農家さんも安心して生産に専念できる。それに、加工品を通して、もっといろんな人に喜んでもらえると思ったので、加工の構想をずっとあたためていました。
ーnoutoでは、「ふるさとを豊かにつなぎ、地域に日常と産業を作り出す」というビジョンを描いていますよね。地域との連携で大切にしていることは何でしょうか?具体的なエピソードがあればぜひ教えてください!
友美
私たちが訪れた農家さんの中に、シャインマスカットを栽培している女性がいました。その方は、道の駅などで販売できるようなジェラートをつくってみたい、という想いがあったのですが、「亡くなった夫がつくっていたシャインマスカットの品質に近づきたい。ブドウづくりが忙しくて、アイデアはあるんだけど、一人で考えているだけではどうしたらいいのかわからない」と悩んでいて。
そこで、「私、挑戦してみます。成功したらぜひシャインマスカットを使わせてください!」とお伝えしたんです。当時は自社で加工ができなかったため、OEM※2の形でジェラートを製造しました。
※2 OEM
Original Equipment Manufacturerの略。他社ブランドの製品を製造すること、あるいはその企業。
ーそれが「農良(のら)ジェラシー」ですね!?
友美
はい。「朝から晩まで野良作業にいそしむ農家さんが、ふと街中で見るクレープなどのおしゃれなデザートに感じるジェラシー」をジェラートにしてみました!
実は「農良」は、正しくは「野良」なんですが、農家さんと農作物への敬意を込めて「農良」の文字にしました!
おいしい、おもしろい、あたらしい!noutoフルーツの魅力
ー工場直売所には、どんな商品が並ぶのでしょうか?
和希
工場直売所とネットの両方で販売していきますが、商品は大きく3つに分かれます。
●山梨県内外の農家さんから仕入れたフルーツを使ったジェラート
●国産のさつまいもを使った糖度60度の干し芋
●特許製法でつくる砂糖不使用のドライフルーツ
ーワクワクします!まずは、ジェラートについて教えていただけますか?
友美
はい!ジェラートの材料となるフルーツは、通年通して、山梨県内だけでなく、県外の農家さんからも直接仕入れています。県内外の農家さんと一緒に課題を解決していきたいです!
ミルクは県内の牧場に実際に足を運び、生産者の方とお会いしてきました。もちろん、わざわざお会いしなくても仕入れることはできます。でも私たちは、生産者の方と直接つながり、顔の見える関係性を大切にしたいんです。そうすることで、ジェラートを販売するときにも、生産者の方々の想いを一緒に伝えられると思っています。
ー「ふるさとを豊かにつなぐ」というビジョンをカタチにしているんですね!
友美
ありがとうございます。
ジェラートは、たくさんの方に味わっていただきたいので、乳製品を使わないフルーツベースのソルベ※3もご用意しています。
さらに、お好きなトッピングを定額で楽しめるコーナーも設ける予定です。ぜひ、自分だけのオリジナルジェラートをつくってみてくださいね!
※3 ソルベ
フランス語で「凍らせる」を意味する「sorbet」に由来する冷たいデザート。主にフルーツや野菜のピューレをベースに作られ、乳製品を使用しないのが特徴。
ー干し芋にはどんな特徴がありますか?
和希
そうですね。サツマイモの産地は、山梨県北杜市の明野地区や茨城、栃木、新潟など、全て国産にこだわっています。
和希
収穫後の追熟※4、加工後の熟成と、二段階の熟成を重ねることで、驚くほど甘く、旨味が凝縮された干し芋に仕上がります。最終的な糖度はなんとあんこと同じ約60度にもなるんですよ。
※4 追熟
収穫したサツマイモを特定の環境下で保管し、甘みと風味を引き出すプロセスのこと。この過程で、サツマイモに含まれるデンプンが時間をかけて糖に変化し、甘みが増す。
これは熟成前の干し芋ですが、よかったら食べてみてください。
ーえ、いいんですか!?(モグモグ…)ん~、優しい甘さ!これがさらに甘くなるなんて……!
和希
いまは歯ごたえがしっかりあると思いますが、熟成後はとろけるように柔らかくなるんですよ。水分が均等に行き渡って、食感もなめらかになるんです。この熟成プロセスが、甘みを最大限に引き出して、しっとりやわらかい食感にするための鍵ですね。
材料やつくり方の他に、noutoは企画が得意なので、売り方にもとことんこだわっています。例えば袋。密閉チャックを採用し、食べかけを他の容器に移す手間を省きました。お客様目線で商品開発を行っています。
和希
その他、たくさんの方にnoutoの干し芋を食べていただけるように、工場で出た切れ端の部分をお得な価格にしたり、一口サイズの干し芋も企画しています。
ー職場で干し芋を握りしめて食べるのは少し恥ずかしいので、一口サイズうれしいです!(笑)
次は、ドライフルーツについて教えていただけますか?
和希
はい。ドライフルーツの開発には、特に力を入れているんです。もちろん、他の商品も全部こだわり抜いてますよ!(笑)
なぜかというと、noutoのドライフルーツは、特別なつくり方を通して、他では味わえない新しい食感と味を実現しているからなんです。一般的なドライフルーツって、食感を出すために砂糖漬けにされることが多いじゃないですか。でも、砂糖を使わないと、どうしても味や食感が物足りなくなっちゃうんですよね。
僕たちは、「砂糖を使わずに、味も食感も楽しめるドライフルーツを作りたい!」と考えたんです。そして、僕たちの想いに共感してくださった2社と協力して、これまでにない全く新しいドライフルーツを生み出すことができました。さらに、長期保存が可能なので、いつでも手軽に美味しさを楽しめるのも大きな魅力です。
友美
ラインナップは、りんご・桃・シャインマスカット・梨の4種類です。特に梨のドライフルーツは、試作品を食べて本当に驚きました。梨独特のあのつぶつぶ感が、そのまま残ってるんです!
ーえ!?梨やりんごって薄くペラペラにならないんですか?
和希
ならないんですよ!僕も最初に食べたときは信じられませんでした。まるでグミみたいな、独特の食感なんです。この砂糖不使用の甘さと驚きの新食感は、ぜひそのまま楽しんでいただきたいですね。
ここまで商品開発をしてきて、改めて「フードロスをなくし、資源を循環させる」ことの大切さを実感しています。noutoでは、生食用としての販売から、ジェラート、干し芋、ドライフルーツといった加工品の開発まで、畑で生まれた農作物を余すことなく活かしきり、地域に還元していくことを目指しています。
ただのお店じゃない!noutoの工場直売所が提供する新しい体験
友美
ただ商品を買って終わり、という場所にはしたくなかったんです。訪れた人がワクワクできるような、エンターテイメント性あふれる空間を目指しました。思い出に残る場所にしたかったので、あえてシンプルなデザインを基調としつつ、遊び心を散りばめています。
2024年には、蛇口をひねると桃ジュースが出てくる、なんていう仕掛けも作ったんですよ(笑)。直売所に設置して楽しんでいただこうと思っています。
それから、お客様と農家さんとのつながりを感じられるような工夫も凝らしました。農家さんのお顔のイラストと、どんな作物を作っているのかが、ひと目でわかるようなディスプレイを設置する予定です。
和希
僕たちは、働く大人の姿を見て、子どもたちが未来に希望を持てることも大切にしています。そのために、直売所や工場の壁をガラス張りにしました。内装に関して、僕が唯一こだわったのがこの点ですね。夜間の無人販売も計画中です。どうぞお楽しみに!
友美
週末に楽しめる体験も提供したいと考えています。例えば 「10秒間!干し芋詰め放題チャレンジ」などのユニークな企画も検討中です。
和希
あのねっとりした干し芋、10秒でどれだけ詰められるか、ぜひ挑戦してほしいですね!(笑)
「働くことを楽しむ」—noutoのホスピタリティ
ーどのような方が働く予定でしょうか?
友美
採用面接では、本当に素晴らしい方々ばかりで、感動の連続でした。和希さん、泣いてましたよね?(笑)
和希
そうなんですよ、もともと涙腺が弱くて(笑)。
今回の面接では、「このお店で働くことで、どんな自己実現ができるか」というテーマで、応募者の方々に5分間のプレゼンテーションをお願いしたんです。皆さん、本当に個性豊かで、熱意のこもった発表をしてくださって。「noutoは、まだまだ可能性を広げられる!」と、改めて実感しました。
採用基準としては、僕たちの理念に共感し、この場所で未来を描きたいという意欲を重視しました。単なる接客ではなく、ここで働くことに意義を感じ、お客様へのホスピタリティを大切にできる方々が集まってくれたと感じています。
障がいのある方の雇用についても、特別なことではなく、自然な形でともに働ける環境を目指しています。誰もが対等な仲間として、それぞれの能力を発揮できる場所にしたいですね。
友美
お客様が求めるものを的確に提供できる、そんなお店にしたいと思っています。在庫状況はもちろん、商品の説明など、スタッフ全員がしっかりとした知識を持ち、お客様一人ひとりに寄り添えるような環境づくりに力を入れています。自分たちがつくった商品が喜ばれる瞬間を味わえるのは、ここで働く大きな魅力のひとつですね!
ちなみに、制服にもすごくこだわったんですよ。着るだけでモチベーションが上がる、自慢の制服なんです!
ー買います!(笑)
そんな素敵なスタッフの皆さんが働くnoutoの工場直売所ですが、いよいよ5月2日(金)にグランドオープンを迎えますね。
和希
はい。地域商社noutoの工場直売所は、地域の魅力を最大限に引き出し、笑顔と感動をお届けする場所です。ぜひ、グランドオープンにお越しください!
【グランドオープン概要】
●日時: 5月2日(金)9:30-16:30
●場所:山梨県笛吹市石和町駅前5-5
noutoが目指す、地域と未来をつなぐ場所
ーミックスペーパーを活用したトイレットペーパーの販売では、売り上げの一部を活用し、子どもたちへのプレゼントにしていますね!そういうことも今後計画されていますか?
友美
はい。子どもたちとアイスの思い出を作る企画や、温泉街のジェラートとして石和温泉を訪れた方々に楽しんでいただける仕組みを作れたらいいなと思っています。
ー工場直売所を具体的にどのような場所にしていきたいですか?
和希
僕たち地域商社noutoのビジョンは、「地域に日常と産業を作り出す」ことです。この工場直売所のオープンは、そのビジョン実現への大きな一歩だと感じています。
まず、農家の皆さんには、ただただ安心して、美味しい作物づくりに専念してほしい。規格外品も含めて、僕たちがすべての作物にきちんと価値をつけて、責任をもって販売します。そうすることで、農家さんが自分たちの仕事に、もっと誇りを持てるような環境をつくりたいんです。
和希
そして、地域の方々やお客様にとっては、この場所が「日常の一部」として、自然と生活に溶け込むような、そんな場所にしたいですね。
訪れる人が増えて、新しい雇用が生まれて、そこで働く大人たちの姿を見て、子どもたちが「将来、あんな風に働きたいな」と、未来に希望を持てるような場所。ここは、僕たちだけのものではなく、地域の皆さんのシンボルとなる場所にしたいんです。
和希
それから、工場直売所は観光でいらっしゃった方々が、気軽に立ち寄れる場所でもあります。
ここでの出会いをきっかけに、後日オンラインショップを利用してくださったり、ふるさと納税を通して、この地域とつながってくださったりしたら嬉しいですね。
そして、最高の接客を通して、「またあの場所に行きたい!」と、お客様の心に残るような、そんな温かい空間を作っていきたいです。
ーnoutoを通じて、どのような未来や地域社会を実現したいですか?
和希
全国の仲間たちと連携しながら、フルーツの仕入れや販売を通じて新しい就労支援※5のモデルを築いていきたいと考えています。現在は山梨県の農作物を中心に扱っていますが、今後は取り扱う作物を全国に広げていきます。
※5 就労支援
障害や難病などの理由で一般企業での就労が困難な人々を対象とした福祉サービス。就職に必要な職業訓練だけでなく、安定して就労するために必要な能力を身につけるトレーニングを提供することを目的としている。
桃やブドウ農家の悩みを知る中で、他の地域の農家さんも同様の課題を抱えていることを知りました。適切なブランディングと販路を確立すれば、この仕組みを全国の就労支援へと展開できるはずです。
例えば、青森のリンゴ農家さんと就労支援施設が連携し、規格外のリンゴを加工・販売することで、新たな雇用を創出できる可能性があります。
noutoでは、特許技術を活用した独自のドライフルーツ製法にも力を入れています。農家さんから仕入れたフルーツをカットし、乾燥処理を行う作業は、就労支援の場で担うことが可能です。
その後、僕たちの販売プラットフォームを活用し全国へ届けることで、農家さんの収益向上にもつなげたいと考えています。
こうした取り組みを通じて、就労支援の場に新たな仕事を生み出し、農家さんの負担を減らしながら、全国の消費者へ美味しいフルーツを届ける。そんな循環をつくることが、僕たちの目指す未来です。この事業には、無限の可能性があると考えています!
ーそれでは最後に、読者へのメッセージをお願いします!
友美
ぜひ気軽に遊びに来てください!
農家の方々にもお客様にも、買い物はもちろん、私たちの工場直売所でのひとときを楽しんでいただきたいです。
和希
お買い物はもちろん、フルーツそのものや交流を楽しんだり、訪れる方が楽しめる場所にしたいですね。
全国の農家さんと、もっとつながりたいのでぜひご連絡ください!
それから、KEIPEの社員の皆さん、ぜひここで一生お買い物してくださいね~(笑)
友美
(笑) お店は交差点の近くにありますので、お気をつけてお越しください!
皆さまにお会いできることを楽しみにしています!
nouto工場直売所
山梨県笛吹市石和町駅前5-5
石和温泉駅から徒歩3分
イオン石和店すぐ、「うどん屋源さん 石和駅前店」の向かい
【この記事を書いた人】
松川 清美|フリーランスライター|NGO広報・編集
インタビュー・取材記事を中心に、企業・団体の想いを伝えるライティングを手がけています。
📝 執筆記事:
「山のようにめぐる世界を目指して」
「ウィズダイバーシティが山梨の企業にもKEIPEにもWin-Winな2つの理由」
「【物流 × 障がい者就労支援】で新たな価値を創造! ロジコネクトのチャレンジ」
📩 お仕事のご依頼・ご相談はこちら:kiyomimatsukawa111@gmail.com